神谷は拳の骨を鳴らす。

 「改めて言おう。
  俺の名は神谷 新右衛門。IFP空軍部大佐だ。
  初めまして。」

 「どうも、はじめまして。
  俺は龍 雷太。“強大組織”『ブラックメン』副総長だ。」

 雷太はシルヴァトゥースに手をかけた。

 「ちなみに、格闘家。称号は今は持っていない。」

 神谷は少しだけ腕を引いた。
 どう見ても、軽いパンチを出すしぐさだ。

 「第一級魔導士。・・・・・・一応リーダーだ。」

 雷太と神谷の距離は遠い。
 そこで神谷が拳を出しても、絶対に届かない。

 「・・・・・・?(何をする気だ?)」

 神谷は無言で、そのまま拳を突き出した。
 当然届くはずもなく、空をきる。

 「・・・・・・・・・・・・・・・???」



 ・・・ゴオッ!・・・ドォン!・・・ドォン・・・ドォン・・・



 雷太の横を凄い勢いの、『見えない何か』が飛び壁にそのままぶつかった。

 驚きの余り雷太が振り向くと、広間の向こうの奥の奥の部屋まで大穴が開いている。

 「・・・・・・・・・な・・・に・・・・・・?」

 驚愕する雷太に、神谷が静かに言う。

 「そして能力は、
  超上級能力・放出系(ララークス)・『空砲』。
  己の意図するままに、空気の砲弾を発射する能力だ。」

 雷太は瞬時に理解した。

 あの鉄壁をぶっ壊したパンチが・・・飛んでくる?・・・しかも見えない状態で?

 「これで情報によるハンデは無しだな。・・・・・・では行くぞ。」

 神谷は静かに構えた。

 「接近戦も遠距離戦もありかよ・・・。とんでもねえな、こりゃ。」

 雷太はシルヴァトゥースから手を離し、両手に魔力を集中する。


 魔法対空砲。


 異色の戦いが、今始まる。



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