ここはチャンポンチャン大陸のどこか。

 草原の長い一本道を、黒い車が一台走っている。

 乗っているのは二人。
 一人は運転手で、もう一人は後ろの座席に乗っている。

 静寂。

 話の一つもない。
 それは後ろの男の性格のようだ。

 その静寂を自ら切り裂き、後ろの男が言った。

 「・・・・・・少々済まない・・・。」

 「は、はい!!」

 運転手は、心臓が飛び上がったような声を出して返事をする。

 「いや、そこまで恐縮しなくても良い。
  ・・・・・・ただ、・・・・・・空気が、揺れている・・・。」

 「・・・・・・・・・はい?」

 全く分からないというように、拍子抜けた返事を運転手は返す。

 「少し、急いでくれないか?」

 「しょ、承知いたしました!!」

 車は加速する。
 制限時速ギリギリで。



 ここは『IFP空軍部第5支部基地』。

 雷太と秋葉は構えたままだ。

 雷太は左手にシルヴァトゥースを持って右手は下げ、姿勢は低い。

 秋葉は、姿勢はそのままだが、右手を羽織の懐に入れている。

 二人とも動かない。まるで時が止まったようだ。

 何かきっかけがない限り動かないだろう。・・・・・・動けないのだ。



 静寂を見つめる中、兵の一人がくしゃみをした。

 二人は同時に動く。

 「水魔法『水流放出(スパート・H2O(spout hydrogen2oxygen))』!!」

 雷太の手から、水が噴出した。

 とっさに秋葉は、左手で水流を止める。

 ただ、相手は水。大部分は地に落ちるが、
 しぶきなどで秋葉やその右手に持った紙は濡れる。