静寂に、声が響いた。

 赤髪の、くまが目立つやる気のなさそうな男が、兵をかきわけ前に出てくる。

 「秋葉さん!」「秋葉上官殿!」という声が、ざわつく兵から発せられた。

 「秋葉・・・・・・?」

 その名前は確かヴィースから聞いた。

 確か、この基地で一番強い者の名前だ。

 「・・・・・・。(確か階級は・・・・・・・・・大佐だったか?)」

 ヴィースが最後にそういう言葉を口にしたような気がする。

 「・・・・・・・・・・・・お前ら、下がってろ。
  ・・・・・・・・・・・・第一級魔導士に、いくら束でかかろうが・・・・・・・・・・・・無駄だ。」

 兵たちは言われたとおりに後ろへ下がる。

 ぽっかりと大きな広間の真ん中に、雷太と秋葉が対峙する。

 秋葉は、だるそうに懐から紙を一枚取り出した。
 何の変哲もない紙だ。



 ボオゥ・・・!



 紙がいきなり、激しく燃えた。

 雷太は顔には出さないものの、驚き構える。

 「!・・・・・・。(・・・能力者!?)」

 「・・・流石場数を踏んでるな、龍 雷太。」

 そう言った秋葉の目のくまは薄れて生気が溢れ、
 言動も先程までのだるそうな声とはうって変わっている。

 「・・・俺の名は秋葉。ここの最高責任者だ。
  ・・・お前を・・・逮捕する。」

 懐から今度は手袋を取り出し、その手で指さしながら彼は言った。

 「逮捕?・・・処刑の間違いだろ?」

 雷太は、シルヴァトゥースに手をかけた。



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