ここはジェライス山。
ナレクト大陸の北端に位置する山だ。
標高は軽く一万を越え、一年中雪が降るその頂上はまるで斬られたように真っ平。
生物は棲んでいるが、人間は住んでいないとされている。
その山に、先程小規模だが衝撃が走った。雷太の乗った飛行機が墜落したのだ。
飛行機はその後動きを止めたが、雷太は未だに出てこない。
《やつは星になったのさ。現実を受け止めようぜ。(ガッツポーズ)》
とそのとき、空から何かがゆっくり降ってきた。雪ではない、茶色だし大きすぎる。
その物質は、静かにパフッと雪原に着地すると、やがて形が崩れだした。
「あ゙――!!死ぬかと思った!」
中から現れたのは雷太だ。
彼を覆っていたふわふわの物質は、ゆっくりと形と性質を変え、いつも雷太が着ている茶色のラフな上着に戻った。
防御魔法『激柔(クレイジー・パフ(crazy puff))』。
どうやら、指定した物質を非常に軽く、そして柔らかくする魔法らしい。
その軽さのおかげで、衝突時飛行機から空中に投げ出されたのだ。
《・・・・・・・・・ちっ!》
「『ちっ!』じゃねーだろ。・・・・・・・・・しかしここは・・・。」
雷太は辺りを見回した。
後ろは崖、それ以外は完全に白の世界だ。今も雪が降っている。
「ここがジェライス山か?・・・・・・初めて来たけど。
・・・・・・・・・・・・・・・寒っ!」
当然だ。標高一万m以上のうえ雪まで降っている。寒くなければ異常だ。
「うう、これはまずい・・・・・・、
大気魔法『暖気定域(ヒート・アトモス(heat atomosphere))』。」
雷太の身の回りに、目に見えない暖気の幕が張られた。そこだけ雪が解ける。
「はぁ〜。あったけ〜♪」
《こいつはこれがあるからな・・・。・・・・・・この卑怯者が・・・。》
と、そのとき――――――
『ザ、ザザ――!・・・ちなみにここがジェライス山だ。』
雷太は振り向いた。なんと録画テレビがまだ付いている。
頑丈と言うか、運が良いというか・・・。
配線がぐちゃぐちゃになった分、時折砂嵐が入るようではあるが。
雷太はテレビに近づいた。