第168話 “酒乱の酒豪”
ヴァンに招かれ、二人は部屋に入った。
整理された綺麗な広めの部屋に、少しの物が置かれている。
壁には風景画や写真が飾ってあり、ヴァンらしいといえばヴァンらしい。
「師匠や新太郎さんの写真も有りますね。」
「本当だ・・・・・・、何か照れ臭いな・・・。」
「まあ座ってよ、何もないけど。」
ヴァンに手で示され二人はゆったりとしたソファに座った。
御洒落なガラステーブルに二対二で向かい合う形になる。
「それで、いきなりで悪いけど何をしに来たのかな?
仮にもここは他組織の本拠地なんだけど・・・・・・。
僕はクロから君達が此処に来るとしか聞いて無いよ?」
ヴァンが冷たく見えるかもしれないが、それは仕方ない事。
幾ら普段接しているからといってもここは他組織の本拠地。
招かれてもいないのにのこのこと来た者を普通はそう簡単には入れないのだ。
世間に示しは付かないし、侵入されたとあっては面目丸潰れで有る。
「ちょっとヴァンさんに聞きたい事があって・・・。」
雷太は何時もと違うヴァンの態度に少したじろぐ。
「電話とかじゃ駄目だったのかな?」
「うっ・・・・・・。」
そういえばそうだ。
こうなると考えなしに、家を訪ねる感覚で来た事が恥ずかしくなる。
「ここにクロさんからの手紙が有ります。」
黒木が一枚の紙を差し出した。
ヴァンは無言で受け取る。