「良く来たな、掛けると良い。」

 クロは椅子を指し示した。

 「有難う御座います。
  此れは土産です。」

 ヨハネスは氷雨に紙袋を手渡した。

 「あ、有難う御座います。」

 「わざわざ悪いな、この面子に何を持って来たんだ?」

 「好みが分かれていますからね、Palette・Bulletの菓子です。」

 「マジか!久し振りだ!
  さあ食おうやれ食おうそれ食おう!」

 アーサーが身を乗り出した。

 「落ち着け。」

 Palette・Bulletとはレヴ・トーア大陸『温泉と顔料の街:ゲイザーアーチ』に
 ある老舗の洋菓子店の事だ。
 その絶品の洋菓子は勿論、和菓子等も多くの人に親しまれている。

 やがて氷雨が紅茶を注ぎ部屋を出て行った後、ヨハネスが菓子を勧めた。

 「どうぞ4人で御食べ下さい。
  さて、今回私が呼ばれた理由を御聞きしても?」

 彼はアーサーを見て問う。
 今回彼を呼んだのはアーサーだと既に分かっているらしい。

 「あ〜・・・・・・。」

 アーサーは気まずそうに笑った。

 「すっげえ言い難いんだけど・・・。」

 「なる程・・・・・・、孤児、ですか。」

 ヨハネスは溜息をついて言った。

 「そうだが勿論戦災や犯罪の孤児じゃない。
  俺がいる限りそんな事は此の街じゃさせない。
  ・・・・・・・・・先日、小規模だが火事があってな・・・。」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 「直ぐに消し止めたんだが、生き残ったのは一人っ子だった男児一人。
  出来れば・・・・・・、連れて行って欲しい。」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」



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