「まあ八星は政府への出入りが多い組織だから、
  レディンにでも聞けばすぐに分かるだろ。
  さて、今度こそ帰――――――

 クロの足が突然止まった。
 いや、足だけではない。

 まるで時がそこだけ止まったかの様に動かない。

 見開かれた目、顔に汗の滴が流れる。

 「お、おいどうしたク――――――

 雷太の言を手で遮り、クロは一点を見た。

 砂が舞う中、何者かの影がある。

 それは次第に形はっきりとしてき、つまり歩いて来る様だ。

 そして現れたのは・・・。

 「・・・・・・え・・・?」

 声を発したのは雷太だ。

 他は声を出さない、いや出せないのかもしれない。

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 現れた者も予想外だったらしく、無表情ながらも驚いている様だ。

 その者の歩みは止まる。

 クロと対極で向き合った。

 整った顔、恐らく20代前半。
 腰には白塗りと黒塗りの鞘を持つ2本の刀。
 長くない髪、鋭い眼光、まるで睨んだだけで斬れそうな。

 『氷上君、鏡は見た事があるかね?』

 クロの脳裏にシド・ヴェインの言葉が甦る。

 二人の剣士は同時に鯉口を斬り刀を抜いた。

 刃が触れる様突き出し重ねる。

 「お前は・・・・・・何者だ。」

 同じ顔をした二人が言った。



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