「キカイがアれば。
  Mr.Sydow、アナタホドのヒトがワレワレをホウモンし、
  サラに『あのオカタ』にまでアってイタダけるのはヒジョウにウレしいコトです。
  あとスコしで『あのオカタ』もキますユエ、オマちクダさい。」

 「勿論、待たせてもらうよ。
  階下の宴会に参加する事は出来ないけどね。」

 部屋の外では大勢の者が騒ぎ立てている様だ。

 「ワレワレはタダココにイるだけでイいとイわれていますので。
  ユエにコのヨウにマイニチタダスきカッテにしているのです。
  もしオキにメさなければタダちにダマらせますが・・・。」

 「いや結構、楽しむのは良い事さ。
  私の事は余り気にしないでくれ給え。」

 「リョウカイイタしました。
  では、ナニかあればオヨびクダさい。」

 空気を読んだ魔族は礼をし扉を閉めた。

 彼は変わらず穏やかにページを捲る。

 「ああ、楽しんでくれ給え。
  残念だろうが最後の楽しみだよ。」

 彼はわずかな隙間が残る壁に指を当てた。

 途端どくどくと壁から血が溢れ出し、彼は指でなぞり文字を書く。

 「騒がしい中・・・彼は気付く・・・扉が叩かれている・・・・・・。
  誰も気に留めない中・・・彼は無駄な正義感を発揮し・・・。
  死の扉を・・・・・・基地を開放し様と・・・。」

 彼は壁から指を離す。
 壁は何事も無かったかの様に乾いた紅い文字を残す。
 勿論、彼の指にも何も残ってはいない。

 凄まじい断末魔の声が・・・・・・階下で上がった。

 「さて・・・・・・。」

 彼は聖書を閉じた。
 途端に聖書はぼろぼろになり、風化して消える。

 「死傍に在て楽しもうか。」

 彼は穏やかに微笑して言った。

 彼の通称は・・・・・・『悪魔』だ。



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