第134話 “肆季 陽月”


 鎖玉の中から出てきたのは見事な装飾を施した刀だ。

 一見どこにでもありそうな宝刀の様だが・・・?

 「おい、起きろ。」

 そう言うとクロは何と刀を蹴った。

 「痛っ!?」

 《刀がしゃべった!?》

 「何をするか美里!
  御主は日頃の恩も忘れおって!?
  ・・・・・・・・・・・・ありゃ?」

 「目が覚めたか?」

 「む、クロではないか・・・。其れに黒霧も・・・。」

 「久し振りだな、肆季 陽月。」



 この刀の名は『肆季 陽月』。
 自ら浮遊し動きしゃべる刀だ。
 とはいっても実は物質系魔族ではなく何らかの経緯で刀が意思を持ったものらしい。
 それ故唯一無二の非常に珍しい刀である。
 ただ・・・・・・、こいつは通称通りの妖神刀。
 人の意思を乗っ取って暴れる事を好むのだ。
 現在はある女性を乗っ取っているそうだが・・・。



 「果て・・・、儂は何時もの様に茶菓子を喰らい・・・。
  さすれば突如眠くなって・・・・・・。
  ・・・・・・・・・・・・・・・一服盛りおったな、美里・・・!?」

 「・・・・・・手紙が付いてるな。」

 クロは鎖玉の中から白い封筒を引っ張り出した。

 「クロ、陽月。
  手紙は見たいが仕事の時間だ。
  悪いが私は失礼するぞ。」

 「そうか、悪いな。」

 「む?じゃあの。」

 返事を聞くと黒霧は一瞬でその場から消えた。