第132話 “炎牛廻り燈籠”


 時は遡り、百数十年前。

 バルロクス・ヴェルフレイムは自身の村で元服を迎えた。

 「おめでとう、バルロクス。」

 「おめでとう、お兄ちゃん。」

 母と妹が彼に祝福の言葉を掛ける。

 「ああ、有難う。」

 村の者々にも祝福される。

 フレイムバイソン族は元服まで働かず己を鍛えるべし。

 村の掟、破るは許さず。

 父が早くに死んだバルロクスは己の道を疾うに決めていた。

 「此れからは拙者が母上と妹を守ろう。」

 其れ相応の覚悟が出来ていた。



 しかし母が原因不明の難病に侵された。

 治療する事は可能だが云千万、延命にさえ云百万掛かるという。

 ヴェルフレイム家どころか村全体でさえ出せない金額だった。

 村人に宥められ長老に窘められ、バルロクスには如何する事も出来なかった。