「乾 新太郎にその連れ人よ、済まないな。
  敗者が勝者に口を利くのもおこがましいが、
  出来れば・・・・・・、決着を付けさせてくれ・・・。」

 そう言うとバルロクスは巨斧を握り構えた。

 「ぬん!!」

 重症人とは思えない凄まじい闘気を放っている。

 「良いな・・・・・・、思いだすぜ。」

 クロは黒い鞘の刀を抜いた。
 こちらは構えずに腕を下げた状態でバルロクスと向かい合う。

 どうやら二人は笑っているようだ。

 もし出会う場面が違ったなら、酒を飲みに連れ立つように。

 「参る!!」

 バルロクスは地を蹴った。
 動かぬクロに向かい巨斧を振り下ろす。

 クロはすっと横に動き縦振り下ろしを避け、後ろに動き横薙ぎをかわした。

 「ぬん!!」

 凄まじい火炎がバルロクスの体から噴き出す。

 と、クロが狙っていたかの様に鯉口を切った。

 「我流・・・・・・風無斬(かざむき)!」

 一瞬の居合い。
 それはバルロクスではなく彼の周りの炎を掻き消した。

 抜刀の風圧で炎や風を消し去る技だ。

 「ぬ!?」

 「我流・・・・・・風蓮華・一蓮。」

 刹那後、クロはバルロクスの後ろに立っている。

 「見事だ・・・、確か前も此の連撃にやられたのだったな。」

 「ああ、懐かしいだろ?」

 「皮肉を・・・・・・。」

 バルロクスは笑い、クロは刀を納める。

 不意にバルロクスの体から血が噴き出し、彼は倒れた。

 「・・・・・・・・・帰るぞ。」

 クロは後ろを振り向いて言った。



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