二者は構える。

 今度はバルロクスにも迷いはない。
 巨斧を捨て、己の体のみで闘う気だ。

 本来余りにも違う体躯、そしてフレイムバイソンという戦闘魔族。
 新太郎の勝ち目はなさそうに見えるが・・・。

 「・・・・・・・・・・・・・・・。
  (・・・此の者、乾は先程拙者の分厚い毛と皮膚を通してダメージを与えてきた。
   若く、己では言わないが相当の格闘家である証拠。
   記憶の靄はあるが致し方無し、ただ勝負を決するのみ・・・!)」

 バルロクスは足に力を入れる。

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 「・・・・・・参る。」

 二人は同時に地を蹴った。

 互いの拳が交差する。

 「「ぐっ・・・!」」

 互いの拳の重さに両者ふら付いた。

 先に立ち直ったのは新太郎だ。

 「おらあっ!」

 「ぬん!!」

 今度は両者の拳と拳が激突した。

 「うおおおおお!」

 「ぬうううううん!!」

 一瞬後、二人は弾かれ離れた。

 「・・・・・・中々やるな。」

 「貴殿もな。」

 「・・・・・・・・・・・・。
  (・・・とはいえあいつの方が体力も耐久力もある。
   こりゃあ即行で勝負を付けないと終わるな。)」

 「・・・・・・・・・・・・。
  (・・・予想はしていたが何と重き拳よ。
   打撃自体はそうでもないが何故か芯に響いてくる。
   此の様な拳を受けたのは『あの男』以来か・・・。)」

 両者は再び激突した。