雷太はきれいな色のオムレツに最初に手をつけた。

 真ん中にナイフで切れ込みを入れると、あとは自然にすぅっと裂け、中に包まれていた挽肉の肉汁があふれ皿を満たす。

 他の料理も実にうまくできている。

 「・・・美味いな。(し・・・幸せ・・・・・・。(幸泣))」

 「ああ、氷雨は料理が上手いからな。」

 「・・・・・・・・・。」

 「・・・・・・・・・・・・・・・。」

 静かに食が進む。余りにも静かなので、雷太のナイフとフォークが食器をこする金属音が響くように感じられる。

 やがて、3分の2ほど食べ終わったところで、ついにクロが口を開いた。

 「・・・・・・・・・・・・さて、そろそろ話そうと思うが・・・・・・いいか?」

 「ああ・・・・・・・・・『任務』か?」

 「そうだ。帰って早々悪いがな。」

 雷太は真面目な顔になった。いつものあほ面ではなく、組織の副総長としての顔だ。

 「・・・・・・重要か?」

 「・・・・・・・・・・・・重要だ。」

 クロは真面目そのものだ。

 更に雷太は聞く。

 「・・・失敗の代償は?」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 クロはしばらく黙った。

 本来、任務が大きいほど、重要なほど、失敗の代償は大きくなる。

 が、彼の口から出た言葉は意外なものだった。

 「別に、失敗しても何も無い。」

 「・・・・・・は?」

 余りに意外な答えに、雷太は聞き返す。

 「・・・・・・・・・失敗しても何も無い。
  俺はお前を罰したりはしないし、俺もお前も誰もかもが、その時は何の被害も直接は受けない。
  ・・・・・・・・・ただ・・・・・・。」

 「ただ・・・?」

 「・・・ただ、失敗したとなると、・・・・・・下手をしたら・・・、・・・・・・・・・いずれは世界が滅ぶ。」

 「なっ!!?・・・・・・世界が!?」

 「ああ・・・・・・理由は聞くな。・・・・・・・・・やれるか?」

 雷太は先程のクロの言葉を思い出した。

 ――――――お前になら安心して任せられる。そう、俺は思っているんだがな――――――

 「・・・・・・・・・ああ。」

 「・・・・・・いい返事だ。」

 「・・・内容は?」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 クロはナイフとフォークを皿に置き、微笑した。

 「・・・・・・お前、『ジョー・ディヴィル』って知ってるか?」



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