第108話 “呼び捨て論”


 「で、何だ?聞きたい事って?」

 「いや・・・・・・、前々から思っていたんだが・・・。」

 「・・・・・・・・・・・・?」

 「お前クロさんの事呼び捨てにしてるだろ?」

 「そうだな。・・・・・・それが?」

 「何でだ?
  組織内でそんなのお前だけだぜ?」

 「えっ!?
  ・・・・・・ヴァンさんがしてるぞ?」

 「いやヴァンさんはクロさんの友人で、
  しかも『メタルガーディアンズ』の総長だろ。」

 「・・・・・・・・・デュークさんが・・・。」

 「デュークさんも友人だし、組織単位だと部外者だろ。」

 「・・・・・・・・・・・・・・・。」

 考えてみればそうだ。
 ブラックメンでクロを呼び捨てにしている者など、雷太しかいない。
 他の者は全員『さん』付けなのだ。

 「今みたいにヴァンさんやデュークさんはお前も『さん』付けだろ?
  なのにクロさんだけは呼び捨てなんだ。
  しかも俺の記憶の限りでは初対面からだぜ?」

 「お前に誘われてここへ来たからな・・・。
  何でだろうなあ・・・・・・・・・?」

 「クロさんもそれを許してるしな。
  結構礼節には厳しい人なのに。」

 「何か・・・・・・敬語使う気にならなかったんだよなあ・・・。」

 「おいおい・・・・・・。」

 「・・・・・・あ、ひとまずデザート食おうぜ?
  あったかくなっちまう。」

 「そ、そうだな。」

 しばし沈黙が落ちる・・・。